誰にも再現できぬものを。

 

6月13日の北日本新聞の朝刊の記事「令和の匠」に取り上げていただきました。大変遅くなりましたが、北日本新聞社さま、文化部の米澤記者に心より感謝申し上げます。もし興味のある方は、北日本新聞のwebunをご覧ください。

自分のことを書いていただいているので、当然知っている内容なのですが、自分の人生って文字にするとこういう感じなんだなと不思議な感覚におちいると同時に、若いことの出来事を昨日のことのように思い出すような臨場感もあります。しかも漆芸の技術的な部分も非常に正確に記載されています。文章が上手いというのはこういうことなんだと思いました。
見出しは「誰にも再現できぬものを」です。二日間にわたって取材をしていただき、いろいろお話をさせていただきましたが、この言葉を拾っていただけたことは、とても嬉しく思います。漆は見た目が華やかで技術的にも複雑なので、そちらに目が向きがちですが、今自分が思うことは「誰にも再現できぬものを」、ただそれだけかも知れません。自分は漆工芸の伝統的な技術以外にも、現代のテクノロジーを使ったモノづくりの知識に関してもかなりのレベルで熟知している自負があります。自分が扱う素材は漆以外にも多方面に及ぶので、3DCAD以外にもCNCフライスや3次元プリンターやレーザー加工機などこの世にある加工技術のほとんどすべてを使っています。別に趣味で使っている訳ではありません。これらすべては「誰にも再現できぬもの」を作るために必要な手段なのです。

しかし、作品をどのような手段でつくったかは、後世には伝わりません。なぜ伝わらないのか?手段はどうでもいいからです。すべての目的は価値の高い作品をつくること、そのためには「誰にも再現できぬものを」つくるしかないという当たり前の結論に行きつきます。
厳しいですが、そういうことです。めでたし、めでたし。

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