あれから4か月経ちました。直後はかなり不安な日々を過ごしましたが、今は心も落ち着きました。家族はみんな無事でした。家屋には被害も多々ありましたが、それはずつ直していこうと思っています。
自分は何かあっても楽観も悲観もしないようにしています。心穏やかに過ごしていないと良い作品ができないということを、人生の経験から知っています。一日の大半の時間は制作に没頭しているので、たまに自分を取り戻すことが難しいと感じることがあります。だから、せめて普段の生活ぐらいは心の振れ幅を小さくするよう心掛けています。戻るべき自分がいないと、安心して深く考え込むことが出来ません。
とりあえず、近日中に屋根を直してもらうことにしました。老朽化していたのもあったし、良く考えれば地震がなくても直そうと思っていたので、いいタイミングだったと思います。建物の漆喰の壁は夏休みにでも子供と一緒に直そうかなと思っています。崩れた灯篭は庭の剪定をしてもらうときに積み直してもらおうと思います。
暖かくなり、庭からはフキノトウやタケノコが生えてきて、自然は何も変わっていないことを教えてくれます。ほとんどのことは人間の心の問題だと思っています。考えてみれば、自分の工芸家人生はそれほど残されてはいないように思います。自分の作風は技術ベースなので、現時点でもすでにレベルを維持するのが難しくなってきています。「年齢を重ねて作品に深みが出てきた」みたいな甘えたことは言いたくありません。余計なことは考えず、ただただ漆芸家として人生を全うしたいと思っています。