漆と金(gold)に関して思うこと。

 

円安で金(gold)の値段がまた上がっていますね。これには本当に困っています。
漆工芸がなぜこんなに日本で発展したのかという歴史的経緯はいろいろあるにしても、比較的少量の金でかなりの面積の金色が得られるという一種の“錬金術”的な要素が背景にあったのは確かだと思います。つまり、安く豪華なモノを作ることが出来たということです。その代わり多くの労動は必要ですが、今と違って戦前くらいまでの日本は人件費が無茶苦茶安かったので、職人に作らせることば“錬金術”に近いものがあったのではないでしょうか。
しかし今の世の中では、その漆工芸の最大の強みが消滅しつつあります。特に多くの時間を掛けたり、金(gold)を多く使う作品をつくることは、よほどのモノでない限り、苦戦を強いられることになります。私は今の漆工芸を取り巻く状況が技術や装飾性から離れていくことに、致し方ないという感を持っています。

といいつつも、私自身は楽観的に自分の好きなことをしています。なぜなら、僕が漆工芸の世界に入ったのは大人になってからで、ある程度社会に対する知識もあり、漆が衰退産業であることもはっきりと認識していました。それにもまして漆に魅力を感じていたし、それに、漆工芸を志したときから思っていますが、技術や装飾性から逃げたら、それこそ漆をやる意味を放棄しているようなものだからです。いつか人生を振り返ったときに、その意味に疑問を持つほうが悲しいですから。

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