昨日の夕日はとても綺麗なオレンジ色でした。ちょうど子供と夕食を食べていたのですが、窓の外がやけにオレンジだったので、行儀が悪いとは思いましたが食事を中断し、家族みんなで夕焼け空を見ました。息子が「何で空がオレンジなの?」と聞いてきました。そういえば最近ヤケにいろいろ聞いてきます。「何で遠くの山は青いの?」とか「地球の裏側の人は落ちないの?」とか子供なら一度は疑問に思うありふれた質問ですが、息子は本気で不思議に思っているようで、その様子がとても面白いです。この前は「何で石は水に沈むのに、アブクは上にいくん?」と聞いてきたので、様子見に「アブクが軽いからだよ」と言ったら、「じゃ、何で小さい石は軽いのに沈むん?」というどこかの教育書に出てきそうな質問が返ってきました。ちょっと可笑しくなって「いい質問だね!自分で考えてごらん。」とだけ言っておきました。
僕が漆世界に入ったことの幸福だった点は、過去にはとてつもない名品があるのに現代ではその制作方法がかなりの部分失われれていたということです。(無論、過去の作品の模倣が自分の最終目的では全くありませんが、あくまでも技術的な知識という観点からは、それは宝庫と言えると思います。)過去に誰かが達成しているのでそれは不可能ではなく、自分は方法さえ考えれば良い。そして到達点さえ高ければ誰でも認めてもらえる。勿論、芸術的なセンスはある程度必要ですが、理論的に考える能力とトライ・アンド・エラーを根気良く繰り返す精神力さえあれば、個人レベルでも充分ヤレる。このような状況って他の世界ではありえないのではないでしょうか。だって科学の世界では人より早く論文を発表しなければ功績にはならないし、産業界では知的財産権があるので勝手に同じことはできませんし。
要するに、価値や目的のようなものは比較的明確で、競争における制約は比較的少ない世界です。このような世界で一番大事なのは、何を疑問に思うかという「嗅覚」です。つまり「なぜ?」と思うことが大事なのではなく、何について「なぜ?」と思うかが大事です。自分はダメ人間ですが、この「嗅覚」と漆という素材に対する適性なら、もしかしたら普通よりあるかも?と思っています。
とても重要なテーマを発見し解決しながら制作すること。これは僕が漆を楽しむための必須事項で、最も失いたくないものの1つです。今は生活に追われてほとんどそのようなことはできませんが、今だに解決したい「何で?」がいくつかあります。そしてその解決のチャンスをいつも探しています。