ミュンスター漆美術館にいく。その2

 

ミュンスターの街は美しい街でした。あまり認めたくはないですが、自分の住んでいることろよりも明らかに美しい街でした。しかしその責任の一端は居住者である自分にもあるので、とりあえず富山を少しでも良い街にしたいなと思いました。そしてドイツの人はとても親切でした。空港で迷っていた時も一般の人がとても親切にしてくれました。もちろんその人がたまたま親切な人だったのかもしれませんが、そのようにして国のイメージができていくのも確かです。
また、美しい街に当たり前のように美術館があり、それが当たり前である社会をとてもうらやましく思いました。もちろんドイツもインフレやウクライナ戦争に起因する不況で、大変な社会状況であるとは思いますが、それ以上に、自分は日本において子供たちの世代に何をしてあげられているか考えると、申し訳ないような気持ちになりました。

展覧会はとても素晴らしいものでした。キュレーターのパトリシアさんやコーディネートしてくれた東さんをはじめ、スタッフの方々には本当に感謝しかありません。遠いドイツの地で日本の漆工芸が紹介された意義も非常に大きいと思います。
また、日本ではあまり漆工芸作家とは会ったりしないのですが、このドイツの展覧会をきっかけに久しぶりに話をすることができました。出品作家は、同世代ではないにしろそれほどの年齢差もなかったのですが、漆工芸といっても素材で括っているだけなので、やっていることや考えていることは様々だなと感じました。みんなそれぞれに漆に希望をもっていて、話していて清々しい人ばかりでした。
気づいたことは、自分は技術的なことか具体性のあることしか考えず、非常に実利的な考え方をしているということです。作品に対する強烈な上昇志向がそうさせているのかもしれません。ただ、それが人を幸せにすることだし、自分が幸せになることだとも思っています。自分はちゃんとしたところで漆を勉強したわけではないので、独力で漆工芸に対する考え方を構築してきました。漆を取り巻く人々が漆についてどのように考え、どのように漆と関わっているのかほとんど知りません。知らないから逆に自分の考えていることに見落としはないかとか、自分の選択は間違っていないかとか常に考えてます。面倒といえば面倒ですが、逆にそれが自分のオリジナリティーなのかもしれないと思いました。
何が正しいとか正しくないとかそんなことは考える必要もありません。世の中が受け入れているなら、それらはすべて正しいのだと思います。

そんなことを考えるドイツ旅行でした。

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