最近思うこと。

 

昨今の情報量の多さには驚かされます。ちょっとネットを検索するだけで、すべてに目を通すことが不可能な量の情報が即座に表示されます。同時に、個人が情報を消費していくスピードも速くなっています。
ネットを介した情報の伝播のスピードは、情報の消費スピードも速めるので、飽きられるのも早くなります。美術の世界で言うと、何とか賞みたいのをもらって、それで人生を逃げ切るパターンが出来なくなってきているように思います。しかしよく考えれば、逃げ切ろうとしない生き方をすれば良いだけの話で、それは単なる実力主義の世の中になったにすぎず、僕はそのような世界の方が好きです。
もう一つの変化したことがあります。一昔前は、雑誌や新聞に載ればそれが一つの“権威”として機能し、しばらくはそれで何とかやっていけた時代でした。今考えるとほとんど笑い話にしかなりませんが、つい10年くらい前までそんな感じで、「美術年鑑に載っています」みたいな人に良く会いました。一般の人にとっての情報源がそれしかなかったので仕方なかったのですが、現在はネットを介せば個人が自由に作品を発表でき、多くの人がそれを簡単に見ることが出来ます。また、何が優れているかを判断しうる十分な材料も簡単に入手できます。つまり、鑑賞者の“鑑賞者としての実力”が前時代とは比較にならないほど上がっているということです。これも先ほどと同じように、“本物”を作って発表さえすれば良いという、実力本位の時代になっただけなので、歓迎すべきことだと思っています。

美術の世界は勝負事のように勝ち負けや優劣がはっきりするわけではないので、残念ながら、口先だけの人がいろんなことを言っています。息子が将棋を始めて1年ほど経ちましたが、とても清々しい世界だなと心から思います。強いから勝つし、弱いから負ける。そこに言い訳はできないし、する人もいません。完全な実力主義です。美術の世界もそのような世界に近付くほど、作り手も作ることに対して純粋に努力するのではないでしょうか。
僕はそのような世界の方が好きです。努力のし甲斐がありますから。

 

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