僕は近年、年賀状を自分の作品の写真にしているのですが、今年はその作品について随分いろいろな方からお褒めの言葉をいただきました。このような年は本当に珍しく、今までに僕から出した年賀状を話題にした人など記憶にありません。なぜか今年急にという感じです。
その中でもとてもうれしく思ったのは、僕よりかなり年長の漆工芸家の方から「年賀状、ホームページの作品を見て感動した」という言葉を頂いたことです。「良い作品」とか「凄い作品」とか言われることはたまにあっても、「感動」という言葉を専門家の口から引き出すのは相当難しいことです。それは特に漆工芸の分野だけに限らず、どの分野でも同じことだと思うので、説明の必要はないと思います。
僕は会社員をしていた頃、ある人に「何年後の自分を念頭に行動しているかで、その人の人生観が分かる」と言われたことがあります。そして「明日の予定しか頭にない人間には人生観そのものがないんだよ、橋本君。そしてそれが10年より短い人間は風見鶏みたいな人間だから深く付き合わない方がいいよ」と。僕がその忠告に従って生きているとはいえませんが、妙に頭にこびり付いていることは確かです。言っている意味は、10年くらいは一貫性ある努力を継続できない人間に対しては無条件にダメだと判定して良い、ということだと理解しています。漆の世界は独特ですぐに結果が出難いので、10年後くらいの目標を立てざる得ませんが、その10年間はたしかに結構辛いです。その10年間の内で何回かでいいので、自分の作品が誰かを感動させ、自分が間違っていないという気持ちになれれば、ほんの少しですが楽になります。そんなことを思いました。